返事と同時に腕が動いた。こんなとき、お客を待たしてはだめである、普通で5分、10分待たしたらお客は直ぐに感じてしまう、
「遅い店だな」と。
取り敢えずビールを出しておつまみにおでんの残りを出しておく。何時も来てくれるのでサービスだ。
「これ気持ちね」
と言っておく。先ほどと同じなので、直ぐに出来あがる、試しに麺にチャーシューと、紅しょうが、それに細く切ったねぎを飾り、出して見た。
「こんな感じで出そうと考えているんだけど、どう思う」
向かって左側に座った山下幸雄が答えた。
「気が早い。食べてからでしょう」
と言いながら、みんなで注ぎ分けたビールを飲み干し、二人に声を掛け食べ始めた。
店内は静かになり、外で降る雪の、積もっていく音が、しんしんと聞こえる気がした。
私は間が持てなくなり、3人に、
「ご飯はいるか」
と聞いたが無視された。私はやる事が無くなり店仕舞を始めることにした。
本日の売り上げ。来店数85人、ラーメン85杯4万2500円、トッピング20品、2000円、ビール生3杯、ビン1本、2000円、おでん30本、3000円、合計4万9500円、であった。朝の雨が夜に雪に変わらなければ、もう少し有るはずだ。それでも一人での売り上げだから満足しているし、一人でやっている商売だから、これで精一杯だと思う。一人バイトを雇えば、もう少しは増やすことは出来ると思うのが。
だいたいラーメン屋とか、焼鳥屋等の飲食店というのは、不況になると増える。先ず仕事が無くなり、リストラされる。中には早期退職で、普通よりも割り増しの退職金を頂く。そして仕事を探すが、なかなか見つからず、転職しても給料は以前に比べると少ない。それならば手っ取り早く素人でも出来る、
「食事処でも出そうか」となる。単純に考えて、全国で20万人のリストラがされて、そのうちの200人に1人がその考えを持つと、1000軒の新しい食事処が出来る事になる。当然その目的でがんばって来た人もいるわけだから、その数は相当数になる。そして、今流行の物を考えてしまう。
それならラーメン屋にしようか。自己流で味付けを考え、有る程度の味が出来上がると、
「この味だと最低100杯は売れる」とうぬぼれた考えをする。
もしかしたら150杯売れるかも。原価を計算すると月に100万の荒利だ。人件費、光熱費、家賃を払っても十分ペイできる。最低でも40万ぐらいは手元に残る。そう机の上で計算する。良い事ばかり考えて、悪いことはほとんど考えていない。経験者は悪いことを先に考え。対策を考えておく。当たり前の話で、プロだけが、出店が出来る訳である。もっともプロでも出来ない人は沢山いるが。