小説【ラーメン屋旅館 ――女心――No17】

小説著者 【 末森拓夢 】


 と答えてくれた。確かにそういう事も有りだな。と思った。店の奥では何処かの会社のサラリーマン達が、カラオケで盛り上がっていた。ここから見るそのグループは若者が中心らしく、今イントロが流れ出した曲は、私には判らない曲だった。だがそんな曲はどうでも良かった。先ほどから、誰に尋ねても、わたしのイメージが上手く伝わらないのか、それとも私の事が嫌いなのかは知らないが、私が知りたかった女の子の名前が、判らずにいた。それであきに聞いてみることにした。
「顔は面長の丸めで、髪は耳が隠れるぐらいのショートで、目はちょっときつめで、細長くて、目じりは、水平に近いが、ちょっとだけ上がっている。口はどちらかと言えばやや小さめの、横が短くて。眉毛はきっちりした形で、細くて、山型をしている。鼻は筋が通って、これも少し上を向いている。この位説明したら、分かるよな、あき」
「判る訳ないでしょ。そんな抽象的な表現で」

 それもそうだ。私は自分の中に有る想像を、人に分かって貰う事がこんなに難しいとは思わずに、今までいた。その後、あきは珍しく私の家庭内の事を話題にしてきた。
「ねぇ、冨雄。あなた、自分の子供の事どう考えているの」
「何が」
「だって、あなたの子ども、確か、もう少しで上の子が、高校受験でしょ。少しは子どもの教育や将来の事、考えてあげているの」
「まぁ、一応考えは有るよ。俺にも」
「ふーん。子どもの食事はどうなのよ。ちゃんと栄養のバランスが取れた食事を取らせないと、将来困る事になるよ」
「朝、しっかり食べさせています。昼は給食と、学食だろ。夜ぐらい適当でも」

 チッラ、と爺さんのほうを見た。爺さんには、他の女の子が付いていて、私は何も気兼ねする必要は無かった。もっとも、別に女の子が付いていなくても、私はそれを気にする必要はなかった。爺さんが目当てにしている女性の所に、先ほど行ったからだ。さらにあきは続けて、生返事しかしない私の、家庭のことを聞いてきた。
「それで掃除はどうしているのよ、自分の部屋だけじゃないでしょ。リビングや、トイレとか、それにお風呂、他にも沢山有るでしょ、掃除しないといけないところは」
「ああっ。それは子どもに任せている」
「任せているって、子どもにそんな事が出来るの」
「出来るよ。小さいうちから、そんな事を、子どもにやらしておけば、自分で勝手にやってしまう。そうなるように教育してきたつもりだ」
「へー、そうなの」
「まぁ、ほとんどが餌をぶら下げているがね」
「餌。何、餌って」
「お小遣い。お手伝いしたら、いくらと決めている。つまり子どもは、小遣い稼ぎに掃除や洗濯をするわけだ」
「ふーん。それで効果は有るの」
「有る。子供だから出来ない訳では無い。今の子どもは少し甘やかしすぎだ。小さいうちから慣れさせておくと、家庭内の事は、ほとんど出来る」
「それじゃ、冨雄の家庭には、女性は必要ないのね」
「いや、そんな事は無いよ。女性には、男性には気がつかない点に気が付く能力が有るからね。その点の事は、私はすばらしと思うよ」
「どんな事」

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