小説【ラーメン屋旅館 ――女心――No19】

小説著者 【 末森拓夢 】


 その頃河野友美は深い眠りについていた。今日の運勢は最悪であったであろう。がラーメン屋の主人に会ってからは少し流れが変わった。結果としてラーメン屋に泊めてもらう事になった。河野友美は、部屋に案内されて、玄関で自分の子どもの靴を脱がしている時、多分この家の主であろう人の、部屋の前を通る足音が聞こえたので、直ぐにドアを開け、そこに居たラーメン屋の主人に礼を言った。

 ドアを閉めた友美は、部屋の中を見て回った。たしかに奥の部屋の、テーブル上にリモコンがあった。その横に何かのリモコンがあって、気になって確認すると、部屋の明かりのものだった。エアコンのスイッチを入れると、少しほこりっぽかったのと、タバコのにおいが少し気になった。押入れを開けると、布団が2組分入れてあり、シーツが無造作に置いてあった。きれいにシーツは洗って有るようだが、やはりカビのにおいが少し気になった。それ以外には冷蔵庫も、テレビも、コタツも、揃ってあった。全ての生活用品は揃っている様で、鍋とか、コンロ、茶碗まで揃っている。誰に言うことはなしに彼女はつぶやいていた。
「まるで何処かの人が生活しているみたいね」

 先ほどまでは寝ていたわが子だが、外に出たときの冷たさと、泊まる所があって嬉しいのか、いや子供だからそんな事は分からない。親が落ち着いている所を見て、
「自分もここに居て良いんだ」と感じたらしく、少しはしゃいでいる所だった。その子は彼女の言葉に、答えるように縦に顔を振っていた。

 そして彼女は靴の手入れを始めた。ブーツの中に、目に付いた新聞を丸めて押し込み、その上に子供の靴を掛けた。彼女の習慣らしいが、考えるとそうしておかないと明日履く靴が無い。そして子供が抱いていた人形は、家族の一員で在るかの様に、話しかけながら下駄箱の上に置いた後、やはり気になってコタツの上に置いていた。

 コタツの電気を入れて直ぐに、子供の足をその中に押し込んだ。足の事が気掛かりになっていたからだ。その日はかなりの時間、濡れた靴を履かしていた。パンツも確認したが、そっちは大丈夫そうであった。コタツの温度を確認して、エアコンの作動も確認した。程なく温もりが感じられるようには、なってきた。台所に立ち、鍋に水を入れ、コンロにかけ火をつけた。少しでも部屋が早く暖まるように、そして湿気はインフルエンザの予防につながる。少ししかない彼女の知識であった。

 彼女の荷物は少なかった。今の人形と、お守りの付いた大きなスーツケース、それから、一番大事なわが子、である。スーツケースの中は、ほとんどが子供の着替えで、自分のものは下着ぐらいだった。それでも保険証と、子供の母子手帳、それに何人かの住所、電話番号が書かれている手帳は、入れていた。もっとも手帳は大阪に居た時のものであるから、ここ広島では使い道は少なかった。

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