そう言いながらあきは立ち上がり、細い腕を伸ばして、私が置いたビニール袋を手にする。無茶な姿勢でビニール袋を覗くと、中からハンバーガーをふたつと紙パックの牛乳、これもふたつほど取り出す。残されたビニール袋は力なくしぼんでいき、微かな重量感だけを残した。残されたものはたぶん、牛乳とハンバーガーがひとつずつだろう。
あきは取り出したハンバーガーと牛乳を、しなやかな指でふた組に別けてからひと組を恵子の前におき、目の前に残ったハンバーガーの包みをガサガサと開ける。
「冨雄もちゃんと朝ごはん取らないと駄目よ。子供の朝ごはんは用意するくせに、自分の食事はいつも後回しなんだから」
赤い口紅で色どられた小さな口を、遠慮を忘れたかのように大きく開けて、ハンバーガーをぱくつく。その姿を見ていた恵子も、遠慮がちに包みを開けてハンバーガーを口にする。私は自分の中にある最大の疑問を尋ねた。
「こんな時間に、どうしたの?」
「営業よ」
と一言だけ答えたあきは、紙パックに付いていたストローを器用に取り、そのまま牛乳パックに突き刺す。アイラインの深い目線を私に向けながらストローをくわえて小さく、ごくりと、のどを鳴らしながら飲み、再び話しだした。
「年末なのに、思ったほど売り上げが伸びていないのよ。それで店長が営業に行って来いって、言い出して。それで仕方なくウロウロしている訳。あっ、そうだ。今日は土曜日だから、立川の爺さんと街に出る気でしょ。忘れずに店に来てよ」
それにしてもあきは、相変わらずの派手好きだ。赤いロングコートの下には赤いスーツを着て、腰に黒のベルトを巻いている。きらりと光るバックルが、安物ではないのよ、とさりげなく主張しているように感じる。対照的に恵子は、ダークグレー色の短いコートだし、下に着たスーツも無難な茜色のものだ。うすく仕上げた化粧も好感が持てる。