小説【ラーメン屋旅館 ――女心――No22】

小説著者 【 末森拓夢 】


 私が何処に居るのか判っている人は、そんなには居ないはずである。何しろ私自身が何処に居るのか判らずに睡眠を貪っていた。だがそんな私の大事な睡眠を邪魔する者が居た。携帯である。うつ伏せになった私の、頭の右の方から聞こえていた。いつも聞くことがある着メロで、大友からであった。右手を伸ばし自分の携帯を探ったが判らず、そのとき私の脳が私に命令した。
「無視しろ」

 どうせ何時もの事でたいした用件では無い。金を貸せ、とか、遊びに行こう、などの類である。だが今日は、その着メロがいつまでも鳴り響いていた。流石にその異常な長さに私の脳は
「不安」という文字を私の中に浮かび上がらせた。ひょっとして今日は本当に重要な事かもしれない。脳がそう判断して、私に命令した、
「携帯に出ろ」
「何の用だ」
「……」

 すぐに返事があると思っていたが、何も話し掛けてこない。それが私の不安を増す。
「もしもし、大友か。聞こえるか」
「……」

 やはり何かおかしい。そこで私は完全に目がさめた。
「おーい、聞こえるか。どうした。何が有ったんだ」
「……」

 これはただならぬ事だ。彼の事だから、何かの事件に巻き込まれたのではなかろうか。そう思って耳を澄まして携帯を聞いた。すると何か音がする。誰かがしゃべっているみたいだ。どうやらそれは、テレビの音声みたいだ。時折大きな笑い声が聞こえる。間違いは無い。それは昼前のバラエティ番組だ。彼は私の携帯を鳴らしたまま自分の携帯をテーブルの上において、
「テレビに夢中だ」そう私の脳が判断したとき、携帯のボタンを、手が勝手に押していた。

 横を見るとあきが裸で寝ていた。その姿を見て、いたずら心が湧き上がり、彼女の大きくない胸を両手で揉んで、その後右手で下半身を探った。彼女が起き上がる気配はなく、そのまま彼女の体の上に自分の体を上に乗せたが、そこで私はやる気が無くなった。

 何しろ頭が痛かった。飲みすぎだ。本当にこんな時は、頭ががんがんする物だなと、今始めて気がついた。いやそれは、私の歳のせいであるのかもしれない。

 そういえばなぜ私はここに居るのだろうか。どんなに考えても答えは見つからなかった。それにここは何処だ。それはなんとなく判った。どこかのホテルである。横にはあきがまだ寝ている。少しずつ記憶が戻ってきた。確か居酒屋で、爺さんと話していたが、酒が廻ってきて、その時あきから携帯があった。

 だがその携帯にちゃんと話すことが出来なくて、それで爺さんに渡したら、爺さんも舌が廻っていなかった。しょうがなくその店の、たまたま通り掛かった従業員に頼んだ記憶がある。そこから先は覚えていないが、あきが横で寝ていると言うことは、その後、何とか、あきと会えて、一晩一緒に過ごした。ということであろう。彼女が裸になっているのは私のせいだろう。横に女性が居るとなぜか着ている物を脱がしてしまう。

 それは私が持つ女性への征服感であろう。
「私の女だ」という気持ちが、
「私の自由になる」という気持ちになり、それが、私が酔っている時、
「女性の着ている物を脱がす」という行為に繋がるのだろう。だがそれにしても少々では起きない子だ。

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