そう思ったとき、再び携帯がなった。先ほどの大友からであった。
「あ、っと。ごめん、ごめん。ちょっと急に来客が有ったもので、携帯を置いていたんだ」
「ウソを言った」そう思いながら、
「それでテレビは面白かったか」
携帯の向こうで大友が
「ばれている」という顔が見えるようで面白かった。
「えっ、そう、そうかもしれん。それよりおまえ知ってるか、かべ線」
「壁線」って、そんな線は何処かの建築現場に引く線だろう。そう思った。
「いやそんな線は知らん」
「お前、何年広島県民をやってるんだ。はい線になるだろ、今度」
「敗戦になるだろ」なんだぁそれ。それって最初から負けると言う事が、判っていると言う事か。出来レースの事じゃないか。大友の奴、何か悪いことに手を出して居なければ良いのだが。
「何が言いたいのか良く分らん」
「おくにかけがあるだろ」
「億に賭ける」まずい。間違い無く大友は悪いことに手を染めようとしている。
「お前それは止めておいた方が良いだろ」
「そうだろ。そう思うよな。廃線にするのは、県民生活に影響が出るからな」
何がなんだか良くわからん。しばらくの間、無視しておいた方が良さそうだ。
「それで何が言いたい。結論だけを言ってくれ」
「ああっ。車を貸してくれ。今から取りに行く」
「無理、無理。駄目だ、駄目。今、何処かのホテルだし、まだ酔いが残っている。爺さんと、約束もしている。明日にしろ、明日」
やっぱりこうなる。私の脳が朝一番に命令したことは、間違いではなかった。携帯を切り、時計を見ると11時をかなり過ぎているところだ。もう余り時間がなかった。あきを起こさなければ。彼女を揺さぶって起こした。
「おい。起きろ。もう時間だ。11時過ぎてるぞ」
「えっ、もうそんな時間なの」
「そう、もう昼前、俺急ぐからこのまま帰るよ」
「えっ、何の用があるの」
「爺さん。爺さんと話す約束をしているんだ」
「爺さんとは、昨夜沢山話をしたんじゃないの」
「それは酒の上での話。今からは大事な話」
「だから何の話よ」
なぜか今日のあきは、しつこく食い下がる。
「人の一生を決める大事な話」
「だから誰の話なの」
「もういい。本当に急ぐから、ほっといて先に帰るぞ」
私が、本当にあきをほっといて帰るかのように、そこまで言うと、あきはしぶしぶ起き上がり下着をつけ始めた。