そこで今の夫と出会ったが、子供が生まれてから少しずつ性格が変わってきて、暴力を振るうようになった。最初は彼女だけだったが、近頃は子供にも手を出すようになって来て、それで大阪とだんなの元から逃げ出してきた。と話してくれた。そこまでを私達に話してくれた。
大阪を出てきたのは、私の推理が近いようである。
爺さんがほえるようにしゃべりだした。
「河野さん、いや河野友子さん。人生そんなに捨てた物だけではない事を、私が証明してあげましょう。先ずはあなたのこれからの生活じゃ。寝る所はこいつの部屋、つまり昨晩泊まったところじゃ、そこにしよう」
「別に私は構いませんが………」
と言いながら私の方を見た。内心私は、どきっ、としながらも、
「私も別にしばらくの間だったら構いませんよ。どうせ使う事は殆ど無いし、もう一部屋ありますから」
この場合、少し困るんだけどしょうがないからという態度よりは、いくらでも空いているから、その方がこちらも助かるよ、と言う態度で行くほうがその後の展開から言ってもいいなと瞬時に思った。
「よし決まりじゃ。次は生活費。つまり仕事じゃな。そうじゃな、河野さんあなた何が出来る」
「私ですか。特に何も得意な事は………、まぁ、ケーキを作る事、位でしょうか」
「ケーキ」
「ええ、大阪に居た頃は、ケーキを作る仕事だったので」
「そうか。それじゃ、ケーキを売る方も出来るのかな。つまり店員さんじゃ」
「ええ、少しくらいならお客様に対応する事は出来ますが」
「よし、私に少しだけ心当たりが有る。なあに、私の昔の教え子たちじゃ。気を使う必要は無い。任しときなさい」
それを聞きながら、私は、
「ケーキか。ケーキはどうやって作るのだろう」と考えていた。確か小麦粉にベーキングパウダー、卵に牛乳、バニラエッセンス、それから香りを付けるには他に何が有るんだろうか。それに上に載せる生クリーム。トッピングも必要だし、レシピが頭に浮かんでこなかった。もっとちゃんと料理を習っておけば良かった。ラーメンだったらいつもの事だから簡単なのに。
先ずはスープである。トンコツと鶏ガラ、豚の三枚肉のブロック。におい消しに大蒜と生姜、それから甘みを出す為の野菜、玉葱と人参とスイートコーンを用意する。それを大きな鍋で沸騰させないようにじっくり煮込む。