小説【ラーメン屋旅館 ――女心――No31】

小説著者 【 末森拓夢 】


 確か以前、私の店にも何回か来た事が有るような気がした。そして河野さんよりは、

 江藤さんの方が7…8センチは高いと思った。河野さんは黒のスーツ姿で、黒のストッキングをはき、普通の型の、紫の混じった黒のロングコートを羽織っていた。靴は、これも普通の黒のパンプスであった。

 やはりそれなりの人がそれなりのちゃんとした服装をすれば、それ以上にしっかりした人物に見えるものであった。そういえば持って来ていた荷物はスーツケースひとつであったはず。何処にこんなものを持っていたのか気になった、が直ぐにわかった。先輩のものを借りたからであった。彼女が低く見えるのは靴の高さの違いであることも直ぐに気が付いた。化粧はそれほど濃くは無く、私から見るとそれで十分であった。
「その辺に適当に座ろうか」

 と言い、
「ついでに」と言った感じで、大友清を紹介した。探偵である事も紹介した。一応広大を出ている事も忘れずに言っておいた。

 爺さんは、右手で河野さんの子ども大樹をつれていた。昨日、雪で遊んでからは、どうでもお爺さんが好きになっている様子であった。河野さんは言った。
「今日仕事が決まったの。それから子供を預かってくれる所も。全部立川さんのおかげよ」
「えっ、もう決まったんですか」
「そうじゃ。全部私が決めたのじゃ」

 爺さんが河野さんの変わりにしゃべりだした。誇らしげに話している様な気がした。
「彼女はなかなか優秀じゃ。先ずは英語が出来るし、少しフランス語が出来る。それに、
「お客に対する言葉使いや、笑顔が、とても印象に残って良い」と私の教え子が面接の後教えてくれた」
「へー、フランス語まで」
「ええ大阪でケーキの勉強をしている時、やはりフランス語は必要ですから」

 当たり前の事です、と言っている様であった。が、私には何か少し差を見せ付けられた気がした。例えばケーキの作り方である。確かに昔、先輩に教えてもらった記憶があった。だがその内容は覚えていない。要するに勉強をきちんとしていなかった。という事であった。やはり勉強はしておくべき事なんだと、思い知らされた。
「仕事の内容は、どんな事をされるのですか」

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