小説【ラーメン屋旅館 ――女心――No35】

小説著者 【 末森拓夢 】


 と言うとなおさら喜んでくれて。でも母は、過去の事は今の夫に、秘密にしていたらしく、私に向かって言いました。
「姪と言う事にしておいて、おくれ」

 と。でもそれでも良かったと思います。母にとってはそれが一番幸せになる事ですから。私はその後、何度か会いに行っています。いつも決まって、お小遣いを渡そうとする母を見ていると、自分にとって幸せとは、自分自身が思うことであり、人が思うことでは無い、と気が付きました。母の事を考えると、私の人生はまだまだ先が有る、今から自分自身の幸せ、を探そうと思っています」
「ふーん。そう。でも良かったじゃない、自分の母親に会う事が出来て。それになかなかそういう事を、あなたくらいの年齢で体験できて、その事を考える機会は少ないし、いい体験をしたと思うよ。私なんかは、この歳になっても悩むなんて事はしょっちゅうだし、毎日考え方が、ころころ変わるからね」
「ところで篠塚さん。離婚されているんですか」

 ちょっとドキッとした。
「ああそうだよ。なぜ」
「奥さんが亡くなっていたら失礼かなと思って。立川さんが言っていました。
「独身だ」と」

 いらない事を、何時の間にか言っているじじいだ。
「まあ、もう昔の事だから気にしていない。それに結構自由があって好きにやる事が出来るし。唯、やはり仕事の方が一人でやると結構きつくて」
「再婚、する気は無いのですか。立川さんの話だと、何か女性の影が有るように思うんですか」

 やっぱり、要らないことまで言っている、あのくそじじい。そういえば、こんな話のとき、女性がわざとこう言って、相手の反応を見る事があると、何かの本で読んだ記憶が頭に浮かんできた。私はもう結婚はしたくないと思っていた。違う環境で育った二人の意見は、違うのが当たり前だと思う。それに家に帰ればうるさく付き纏うし、だいいち自由が束縛される。と考える様になったからだった。だがなぜかそのときは、
「しても良いな、と思う女性が現れたらね」
「どんなタイプが好みですか」
「うーん。ネコガオかな、ちょっと前に流行った言い方だけどね」
「年齢で言うとどの位が良いの」
「上は35歳くらいかな。
「可愛い所が有るな」って思う事が出来る年齢がいいね。同じ歳だと、
「平等な立場で考えてしまう」から少し離れていた方がいいね」
「それでは下のほうは」

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