小説-ラーメン屋旅館|今晩待っているからね

「ごめーん、冨雄。今晩待っているからね」
 あきは急かすように恵子を立たせると、そのままふたりで連れ立って店を後にした。私は足元に転がるゴミをひょいと拾ってからゴミ箱に入れた。目の下に広がる光景は、いつもとはちょっとだけ違い、あきが残していったビニール袋が見えた。

 朝から降っていた小雨はいつしか粒が大きくなり、店が暇になる昼過ぎにはみぞれ交じりとなった。そのみぞれ交じりの雨は、日の暮れる頃には白い物が目に付くようになり、この時期としては珍しく雪と呼べるまでになった。

 夜も九時を過ぎると店の前を通る人影はまばらになり、先ほどまで賑やかに繁盛していた店内は、ふたりきりの客だけになっていた。奥側のカウンターに座る男性は、月に二、三回来店する人物で、身長が百八十センチくらいの、盛り上がった筋肉が目立つ人だった。

 彼はいつものようにいすに深く腰を掛け、カウンターの上に置いてあるラーメンをすすっている。今日も紺のスーツに縦縞模様のワイシャツを着込んでいて、ネクタイは濃いベージュにうすいベージュの模様が混じったものだった。

 ネクタイの中央辺りに付けられたピンには真珠の玉がいやらしく輝いている。コートは着たままで、殆ど黒と言っても構わないぐらいの濃い茶色であった。私から見たら、ちょっと時代遅れの服装をしている。名前は竹原のはずである。いつもひとりで来るのだが、半年ぐらい前、友人らしき人物と来ていて、竹原と呼ばれていたので覚えていた。

 私達みたいな飲食店でお客の名前を知る機会は少ないのだが、印象の強い人は、何かの機会に知る事があった。印象の強い人には、普段から結構気を配っている証拠だろう。下の名前は知る機会が無かったので分からないが、いつも、夜の九時を過ぎたこの時間帯か、昼の十一時過ぎに来店してくれる。仲介手数料‐相場で待ち合わせしたのがまずかったのかもしれない…

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