結局、東京から来た青年、反岡一樹は、私のラーメン屋の裏に泊まる事になった。大友はそれが言いたかったらしい。
それと私は自分の携帯が無い。取りに帰ったところでついにダウンした。あきに何とかメールだけは送って、私も、ラーメン屋の裏の部屋で寝ることにした。ふた部屋有るのがこんな時の強みであった
私の子供は、正月の間は元の妻に預けている。子供も喜ぶし、彼女もうれしいに違いない。私も久しぶりに自由な時間がたっぷりとある。いい事だらけだ。だが私はその時、大友が言っていた、
「加計の話し」をすっかり忘れていた。
一月の一日。元旦である。その日、私達はJRの可部線に乗っていた。その列車に乗っているのは、29日の朝、大友が誘ったからである。その前日、大友が連れてきた反岡青年は、水の研究をしていた。ちょうど今は大田川の水の性質を研究している所で、それで
「太田川の源流に行きたい」と言っていると、大友が説明してくれた。
私は、反岡青年と、大友との間柄を聞いてみた。
「それで大友彼との間柄は」
「いや、それを話し出すと長くなるから」
と、大友が言ったので私は、何も話さない気だな、と思った。当、然誰でもそう思うに違いない。だが彼は、だらだらと話を始めた。
東京の有る大手のメーカーの役員が広島に転勤になった。一応栄転の転勤である。また東京に戻ると、その役員は常務に昇進と言われていた。その期間は3年か5年くらいだ、と言われたその役員は、家庭の事情を考えて、単身赴任に決めた。ちょうど夫婦の中に倦怠感があって、新鮮な事があれば、と考えていたのも作用した。
役員ともなると、ある程度の経費が使えた。つまり接待だ。接待と言えばゴルフ、その後夜の街、広島で言うと流川であった。当然行く店は自分の好みの女性が居る店に偏る。何回も行くうちに男の中の欲望がうかんできた。
それはまるで深い海の底に、小さな空気の粒が生まれ、それが浮かんでいくと同時に、徐々に大きくなっていき、それが海面近くでは想像できないくらいの大きな塊となっているようであった。
そしてそれは、ついに海面に浮かび、大きな音と共に破裂した。特に特定の彼が居なかったその女性は、役員の欲望を受け入れた。