小説【ラーメン屋旅館 ――女心――No50】

著者 【 末森拓夢 】


 彼女から見たらただの遊びであった。それに大手メーカーの役員ともなれば少しくらいはお小遣いをくれるかも、という心理も働いた。つまり寂しさと、小さな期待で、彼女はその役員の欲望を受け止めたわけだ。

 欲望の働くその役員は、好き放題にその女性を抱いた。その結果その女性に葉、その役員の子が宿った。

 彼女は19歳、未成年だった。その処理のために大友が借り出された。
「だけどそれだと、この青年と、その役員の関係はわからんじゃないか」
「ああ。親子だ」

 その反岡青年を見ると、今の話を聞き流しているみたいだ。何時も、そんな事を自分の親がしているのか、同じような事をその青年がしているのか、平然な顔をしていた。それともただ物分りの言い青年なのか、気になって聞いてみた。
「別にそんな事、気にする必要は無いと思いますが。そんな話、地元ではあちこちで聞くことが出来ますから」

 ただ単に冷めているのか、年齢の差を感じてしまった。大友はその後を続けた。

 その役員が、自分の子どもの研究に大友を借り出した。役員はかなりの報酬を大友に対して払っていた。だが自分のした事の処理だけでは気に入らなくて、子どものお守りを押し付けてきた。その大友は、その青年が泊まるホテルの代金がもったいなくて、このラーメン屋に連れて来た訳だった。

 詰まり大友は私の承諾なしに、ここに泊まらせるつもりで東京から青年を連れてきたわけだ。
「それでどうせ太田川の源流に行くのなら、今話題の可部線で行こうかなと思って」

 可部線ああ、それで彼は可部線と言っていたのか。思わず苦笑いをした。そんなわけで、新年早々、この列車に乗っているのだ。そして、その列車に乗り込んだのは、かなりの人数になっていた。最初は3人、大友と、私と、例の青年反岡、のはずであった。だが爺さんが、
「年寄りが1人ぐらい居た方が、何かと便利だ」

 と言って割り込んできて、あきまでが、
「連れて行かないと、私は自殺するから」

 ほとんど脅しである。そんな事があって、結局5人で行く事になった。

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