小説【ラーメン屋旅館 ――女心――No52】

著者 【 末森拓夢 】


 そう説明すると、妙に納得して感心していた。もっとも私は適当に言ったのだが。
「ふーん。冨雄はいろんな事知っているね」

 と言って私の方を見た。
「ついでだから違う事も教えてやるよ」

 私は、そう言ったが、直ぐに、
「面倒だからまた今度な。何かの機会があれば教えてやるよ」

 いつの間にか、列車は可部駅に着いた。ここで私達は乗り換えである。直通ではなかった。そう言えば新聞に載っていた。可部線の、可部駅から奥が廃線の対称だと。

 確かにその新聞に載っていた通りである。私達が乗り変えた列車には、他の誰も乗っては来なかった。これでは廃線もうなずける。だがそんな事は、今の私達にはどうする事も出来ない事である。私達は4人掛けのシートに、無理やり5人座ろうとしていた。爺さんが言い出した事で、
「何とかここに5人座ろう。ひとり溢れると、その人が可哀想じゃ」

 だがその意見に反対する人がいた。あきである。
「そんな事は無理よ。私は富雄の横に座るわ」
「そう言うがの、残った人はどうすれば良いんじゃ。他の人の事を考えろや」
「そんなの3人でどっかのシートに座れば良いじゃない」
「いやそんな問題ではない。いっしょに行くからこそ、この旅行は面白いのじゃ」

 爺さんは間違っている。これは旅行ではなくて調査のために行くのだ。
「いやよ。何があっても私は富雄の横に座るわ。せっかくの正月休、やっと富雄と旅行に行けると思っているんだから」

 彼女も間違っている。これは調査のために行くんだ。そこで大友が言ってきた。
「もう良いよ。俺がこれに座るから」

 その顔はあきれ返っていた。そして彼が座ったのは、新聞紙であった。どちらかと言うと、地べたに座り込む形である。良い事に周りには誰もいない。これも有りだな。と思った。だがそれに反するように、発射のベルが鳴り始めたときにひと組のカップルが乗り込んできた。どうやら夫婦のようであった。宴会の準備に入っている大友と爺さんが、それには気がつかずにいた。どうやら準備に気を取られているようであった。
「もーぅ。あなたが急がないから。ほらこんなにぎりぎりの時間になってしまったでしょ。だから言ったのよ。もって急げと」

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